芦屋市立美術博物館|コレクション展 絵画はつづく、今日にむかって
2021年9月18日(土)~11月21日(日)
「絵画はつづく、今日にむかって」
絵画は今日まで続いてきました。
何度もその終焉をささやかれても、
美術の主要ジャンルであり続けています。
それは、1人ひとりの画家がただ描いてきたことによって。
ただ描いた、1枚1枚の絵によって、
今日まで続いてきたのです。
今日を生きる私たち。
絵の前に立てば、作品と格闘する画家の当時の「今」と、
鑑賞する私たちの「今」が、重なります。
作品が伝える、画家たちの真摯な探求の姿は、
今日を生きる1人ひとりの私たちを、力づけてくれます。
美術作品には、作者の思考が刻み込まれています。絵画であれば画家1人ひとりが「何を」「どう」描くか、そして「何がよい絵なのか」という問いを持ち、これに対して出したひとつの答えが作品なのです。本展では、芦屋市立美術博物館のコレクションの中から絵画作品に焦点をあて、「モチーフ」という視点からその実像に迫ります。
「モチーフ」とは風景や人物のモデルなど、絵に描かれる「対象」を指しますが、そのほか制作の「動機」、作品の「主題」や「構成要素、構成単位」という意味ももちます。抽象的な絵にも、画家がその絵で目指したモチーフに迫ることは、画家の設定した絵についての問いと答えに迫ることにつながります。絵画の問題に真摯に向き合う画家の姿は、先の見えない困難のなかにいる現代の私たちにも、前向きな気持ちを与えてくれるのではないでしょうか。
プロローグ 絵画の成り立ち
絵画を成り立たせているものは何でしょう。
絵を見てまず知覚されるのは、何が描いてあるか(=イメージ)、そしてそれを構成している色彩や線です。物質的には、紙やカンバスといった支持体の上に絵の具がのってできています。絵の具の表情を見つめてみると、ここに閉じ込められた色彩は実にさまざまな表情で輝いていることがわかります。
また絵の具や支持体は、絵画の本質についてのキーワードにも関係しながら、これまで美術史のなかで語られてきました。展覧会のプロローグとして、作品とともに、絵画の存在をめぐる10個のキーワードを紹介します。
第1章 描きとめる ー眼の欲望と手の仕事
画家はそれぞれのモチーフを世界から選び取ります。ありふれた日常に着眼し、描くに足るモチーフとしてしまう、画家のまなざし。ふとした子どもの表情や動物の躍動感、自然のきらめきに言いようもなく引きつけられ、一瞬の表情や動きを何かに留めておきたいと思うことは、私たちにも共感できるのではないでしょうか。いわば、眼の欲望です。
そして、モチーフを眼と手で確かめながら画面に描いていく筆跡には、モチーフに対する愛情や、画家としてのひたむきな熱意がこもります。画家の手の仕事を通して画面に現れるモチーフは、現実のたたずまいのうえに絵画としての味わいをまとって、絵画ならではのイメージとしてあらわれます。
第2章 絵をつくる ーモチーフの操作と構成
画家たちはモチーフを絵にするとき、画面にどう収めるか、を考えます。バランスよく画面に収めるための構図にとどまらず、線や色彩を意識的に調整し、省略したり強調したりしていく画家の絵づくりには、描写から離れることになっても、絵としての生命力を探求していく意思がこもります。
このように意識的な絵づくりを推し進めていくと、次第にそれとわかる具体的なモチーフが解体され、画面は純粋な色彩や線、形によって構成されていきます。「何を描くか」から「どう描くか」という問題への移行です。
第3章 描くことへ ーせめぎあうモチーフとイメージ
モチーフの再現から自立した色彩や線は、それ自体が、画家が画面にはたらきかける手立てとなり、画面の構成要素としての抽象的なモチーフ、また画家の動機という意味でのモチーフとなります。あるルールや秩序のもとで画面を構成する色彩や線は、やがて画家の描く行為の痕跡そのものとなり、また極限まで要素がそぎ落とされた画面の中に静かにたたずむようになりました。一方で、従来の具体的なモチーフは完全に消失することはなく、具象と抽象のあいまを円環する、絵画の営みが現在まで継続しています。
画家たちが試行錯誤によってカンバスに立ち上げてきた絵画的なイメージは、見る者の多様な見かたを受けとめる強さをそなえています。今日の私たちは、絵画を通して画家のまなざしを追体験するだけでなく、ときに個人的な心象を投影しつつ、自分に引きよせて見ることで、絵画とのゆたかな交流の時間を体感できるのです。
関連イベント
①講演会「絵画のみかた ーフォーマリズム入門」
講 師 川田都樹子(美術評論家)
日 時 10月2日(土) 13:00~15:00
※終了後、展示室にて講師立ち合いのもと自由鑑賞
会 場 芦屋市立美術博物館 講義室
参加費 無料
定 員 60名(予定)申込不要 直接会場にお越しください。
内 容 フォーマリズムとは、絵画を見る手法のひとつです。何が描かれているかではなく、画面上の色や形、絵の具の様子などの造形的な観点によって、絵画を見ていきます。鑑賞者みずから積極的に作品の魅力に切りこんでいく、絵画のみかたがご紹介されます。
②ワークショップ「動きを描く ーダンシング×クロッキー」
講 師 ナビゲーター/岸本恵美子(画家)
ダンサー/伊藤愛
音楽/稲田誠(コントラバス奏者)
日 時 10月9日(土) 16:30~19:00
会 場 芦屋市立美術博物館 エントランスホール
参加費 無料(要観覧券)
対 象 高校生以上
定 員 20名 ※要事前申込 9月25日(土)締切
内 容 クロッキーとは短い時間ですばやく対象を描いていくこと。今回はダンサーさんが躍る様子をクロッキーします。無心で手を動かす楽しさや、自分の意図をこえて画面に現れる線の面白さを味わいます。
③学芸員によるワークショップ
1.「絵の具とあそぶー抽象画に挑戦」
2.「美術館の絵画教室ーりんごがひとつ」
日 時 1.10月23日(土) 13:00~15:00
2.11月7日(日) 13:00~15:00
会 場 芦屋市立美術博物館 体験学習室
参加費 無料(要観覧券)
対 象 小学生以上
定 員 20名 ※要事前申込 1. 10月9日(土)、2. 10月24日(日) 締切
内 容 1.様々な画材と技法を使い抽象的な絵作りを体験します。
2.りんごというひとつのモチーフを、様々な画材と技法で描写することを体験します。
④学芸員とギャラリートーク
日 時 9月26日(日) 14:00~15:00
10月17日(日) 14:00~15:00
10月30日(土) 14:00~15:00
11月3日(水・祝) 14:00~15:00
会 場 芦屋市立美術博物館 展示室
参加費 無料(要観覧券)
対 象 どなたでも 申込不要 直接会場にお越しください。
申込方法
芦屋市立美術博物館へお電話(0797-38-5432)か メール(ashiya-bihaku@shopro.co.jp)にて、
・イベント名
・お名前
・人数
・ご住所
・ご連絡先
を お伝えください。応募者多数の場合は抽選となります。
詳細データ
日 時 |
2021年9月18日(土)~11月21日(日) 10:00~17:00(入館は16:30まで) 休館日:月曜日(9月20日は開館、翌9月21日は休館) |
会 場 | 芦屋市立美術博物館 第1,2展示室、エントランスホール |
観 覧 料 |
一般 500(400)円、大高生 300(240)円、中学生以下無料 ※同時開催「芦屋の歴史と文化財」展の観覧料も含む ※10月17日(日)と11月3日(水・祝)は無料観覧日 ※( )内は20名以上の団体料金 ※高齢者(65歳以上)および身体障がい者手帳・ 精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳を お持ちの方ならびにその介護の方は各当日料金の半額になります。 |
主 催 | 芦屋市立美術博物館 |
後 援 |
兵庫県、兵庫県教育委員会、公益財団法人兵庫県芸術文化協会、 神戸新聞社、NHK神戸放送局、Kiss FM KOBE |
お問合せ |
芦屋市立美術博物館 〒659-0052 兵庫県芦屋市伊勢町12-25 TEL 0797-38-5432 FAX 0797-38-5434 |